キャリーを出した途端、猫がベッドの下へ隠れてしまう。捕まえようとすると逃げ回り、ようやく入れたころには、猫も飼い主さんも疲れ切っている。
そんな経験はありませんか?
我が家の猫も元々キャリーが大嫌い。キャリーに入ってもらおうとすると、絶対にキャリーには入らない!という強い意志を感じるほどでした。
猫がキャリーに対して『動物病院へ連れて行かれるときだけ現れる箱』という認識を持ってしまっていると、キャリーを見ただけで警戒することがあります。
しかしキャリーは通院のためだけに使うものではありません。
災害時に猫と一緒に避難するときや、急な移動が必要になった場合にも欠かせない道具です。
いざというときに『猫が入ってくれない!』と慌てないためには、普段からキャリーに慣れてもらうことが大切です。
キャリーを必要なときだけ取り出すのではなく、日頃から暮らしの中に置いておく。そうすることで、猫にとってのキャリーを『逃げたくなる箱』から『入っても大丈夫な場所』へ、少しずつ変えていくことができます。
今回は、猫のペースに合わせて無理なく進める、キャリーの慣らし方をご紹介します。
1.キャリーの存在に慣れてもらう
普段キャリーはどこに置いていますか?
クローゼットや押入れ、普段目につかない場所へ直している方が多いのではないでしょうか。
そして、仕舞っていたキャリーを動物病院へ行く日だけ猫の目の前に出していませんか?
毎回、嫌な場所へ行く時にだけキャリーが目の前に現れると、猫はキャリーの登場と苦手な出来事を頭の中で、結びつけてしまいます。
『キャリー=嫌なことが起こる特別なもの』という意識を変えるため、まずはキャリーの扉を開けた状態で、猫が普段過ごす部屋に置いてみましょう。
人の出入りが多い場所や大きな音がする場所よりも、猫が落ち着いて過ごせる場所を選んで置いてあげてください。
最初は、猫をキャリーへ無理やり入れようとせず、自由に確認してもらいましょう。キャリーを見たり、近くを通ったり、においを嗅いだりするのも、猫が少しずつキャリーに慣れていく過程の一つです。
警戒している場合は、追いかけたり、抱き上げて押し込んだりせず、自分から近づける時間をつくります。キャリーの存在が日常の一部になるまで、急がず見守りましょう。
2.キャリーの中を安心できる空間にする
キャリーが猫にとって『日常的にあるもの』になってきたら、次は中で安心して過ごせる環境を整えてみましょう。
キャリーの中には、猫が普段使っている毛布やタオルなど、慣れたにおいのする物を敷いてみます。飼い主さんのにおいがついた衣類を入れるのも一つの方法です。安心できるにおいがあることで、慣れない場所への警戒が和らぐことがあります。
それでも中へ入らない場合や、キャリーに興味を示さないときは、敷物をキャリーの近くに置くところから始めます。そこで落ち着いて過ごせるようになったら、入口付近、入口の内側、キャリーの奥へと少しずつ移動させてみましょう。猫のペースに合わせて段階を踏むことで、自分から中へ入りやすくなるかもしれません。
猫が少しキャリーに慣れてくれ、キャリーの中で休んでいても、すぐに扉を閉めたり、そのまま動物病院へ連れて行ってはいけません。
『入ったら閉じ込められる』と覚えないよう、猫がキャリーを自由に出入りできる時間を十分につくりましょう。
なお、中へ入れる毛布や衣類は、糸のほつれや飾りがないか確認してください。猫がかじって飲み込む可能性のある物は避け、安全に過ごせる状態に整えてあげてくださいね。
3.自分から入れたら、よい経験を
キャリーの中を安心して過ごせる空間に整えたら、おやつや遊びを取り入れながら、猫が自分からキャリーに入ることができるきっかけをつくります。
はじめはキャリーから少し離れた場所でおやつを与え、慣れてきたら入口の近くへ置いてみましょう。猫が前足を入れられるようになったら、少しずつ奥へおやつを置く場所を変えています。
猫が中へ入れたからといって、すぐに次の段階へ進む必要はありません。まずは入って出るだけ、次は中でおやつを食べる、その次は短い時間を過ごすというように、無理のない範囲で経験を重ねましょう。
食べ物にあまり興味を示さない猫には、好きなおもちゃで遊んだり、穏やかに声をかけたりする方法もあります。
猫が心地よいと感じるものを、ごほうびとして取り入れてみてください。
怖がっている猫を叱ったり、無理に入れたりすると、キャリーへの不安が強まる可能性があります。できなかったことではなく、近づけた、においを嗅げた、中をのぞけたといった小さな変化を大切にしましょう。
4.扉を閉める練習は短い時間から
猫が自分からキャリーへ入って落ち着けるようになったら、次は扉を閉める練習へ進みます。
最初は飼い主さんが扉へ手を触れるだけにして、猫が警戒しないか確認します。問題がなければ、扉を少し動かす、短時間だけ閉めてすぐに開けるというように段階を重ねてください。
扉を閉めた状態でも猫が落ち着いていられるようになったら、キャリーを少し持ち上げて下ろします。その後、室内を短い距離だけ移動する練習へつなげましょう。
猫が鳴き続ける、呼吸が速くなる、耳を伏せる、体を低くして固まる、逃げようと激しく動くといった様子が見られた場合は、練習を進めすぎている可能性があります。猫が落ち着けた段階まで戻り、時間や動きを小さくしてください。
慣れるまでにかかる時間は猫によって異なります。数日で入れる猫もいれば、数週間以上かけて少しずつ慣れる猫もいるでしょう。期限を決めて急ぐより、嫌な経験を増やさないことを優先します。
「何も起きない日」に慣れておく
猫にとってキャリーが怖い場所になりやすいのは、キャリーに入るたびに、通院や移動などの慣れない出来事が始まるからです。
だからこそ、何も起きない普段の日にキャリーへ入り、安心して出てこられる経験を重ねることが大切になります。
今日は部屋に置くだけ。明日は近くでおやつを食べる。慣れてきたら、中で少し休んでもらう。このように小さな段階へ分ければ、猫にも飼い主さんにも『キャリーに入る』ということで負担がかかりにくくなります。
けっしてキャリーを好きになってもらうことだけが目標ではありません。『入っても怖いことが起きるとは限らない』と感じてもらえれば、通院や避難が必要になったときの負担を減らせる可能性があります。
まずはキャリーをしまい込まず、扉を開けて部屋へ置くところから始めてみませんか?


